チビ・ミラーコリ(奇跡の食事)(4)~くさい貝~

海の幸、といっても実に様々だ。
ウミウシを食べるところもあれば、ナマコだって最初食べたやつは凄いと言ったりする。

朝早く、叔父は私を連れて磯部へ行く。
三つの銛をつけた棒に、生の鯖の頭をひもで括り付ける。
それをそっと磯部の岩陰の入り口ぐらいのところに持ってゆく。
そしてやおら、棒を前後にゆすり、まるでサバの頭が生きているように舞わせる。
しばらくすると、足を緩やかに動かして、タコが岩穴から出てくる。
サッと、タコがこの頭に抱き付く。
その瞬間、叔父はすばやくタコをひっかけ、海から引っこ抜く。
これが、ここ島根県での磯場のタコ捕りのやり方である。

何匹かタコを生け捕りにしている叔父の少し離れたところで、私は、ボベ貝採りに専念する。
この貝は、カサガイ科の巻貝、ヨメガサ貝のことであり、ボベはこの地方の方言である。
貝殻は、平べったくて、ヴェスーヴィオ山のように山形をしていて、頭頂部から薄らと幾本か筋が入っている。色は薄い深緑色で、斑点状のような模様があるものもある。

これをバールやマイナスドライバーで岩からはがし取る。
物の五分で両手いっぱい分採れてしまう。
昼には叔母の作った握り飯で済まして、次に釣りに移る。
そうこうしているともう夕方である。

網に大量のタコとボベを入れて帰宅する。
ボベを水で洗い、鍋に入れて茹でる。
通人は、この茹で汁を使っておコメを炊く。私は、この汁が苦手である。
あまりにも、磯の香りが強いからだ。

「食いしん坊バンザイ!」に出演した芸能人が収録中に、旨いと言って笑顔だったのが、撮影が終わるや否や、その場でこのボベ飯を吐き出して苦しんでいたそうである。
それだけ癖のあるものだから、海人以外は広まらなかった。
「ケンンミンショー」で取り上げられ少し有名にはなったけれど・・・・。

磯の香りが強いが、貝に特別な味はなく、蒲鉾に歯ごたえのあるような噛みごたえがある。貝殻から外すと、身は小さな棘が二つあるような触角が生え、茹で豆のようにコロッとしていて、背がオリーブ色、腹が黄土色をしている。
こいつのできたては美味しい。
私が社会人になって家に行くと、決まって、これを採りにゆき、ボベ飯となる。

「かぁちゃんと似て、こいつが好きだのーお前は・・・」

というのが叔父の口癖である。

私にとっては、自分の中に海人の血が流れている証拠だと、ボベのことを思い出すと確認したりする。
海人の変わった料理、他にもありますか?
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「毒蛇は急がない」

Bayartai!

野人

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by yajingayuku | 2014-10-23 15:44 | 木陰のランプ