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イタリア紀行(43)

イタリアの現代の墓所は、日本の暗いイメージとは違い、かなり飾り物などもあって賑やかである。ペルージアの麓に、最古級の教会の向かいに墓場がある。塀に囲まれ、入り口には大きな扉が備え付けられ、管理人もいるような場所だ。中に入ると、墓石が日本のように垂直に立っているのではなく、地面に墓板がはめ込まれているものが多く、中には祭壇のように屋根のあるものもある。珍しいのでは、ローマにあるように、ピラミッド型をした墓がある。

エトルスキの墓は、チェントロの近くに、例えば「クトゥの墓」や「スペランディオの墓」のように城壁外部にあり、その他の墓はペルージア近郊に点在しており、中でも、「ヴォルムニの地下墳墓」は大変有名である。ペルージアの隣駅で電車を降りて、ペルージア方面の線路伝いを行くと、踏切があり、その横にこの地下墳墓がある。平屋の一軒家といったその建物の中に、地下への入り口がある。入り口付近から、墓内部の入り口一帯にかけて、夥しい数のエトルスキの小型納骨容器が並べられている。管理人部屋で入場料を支払い、先ずこの外観を撮影する。どの容器もどこかで見たことがあると思ったら、思い出した、ブルンの集成に載っているものばかりだった。

墓の入り口には、大きな石の扉が据え付けてあり、内部の空間は思った以上に広く、小文字の英語のtの形をした内部空間である。正面の墓室の入り口上部には、ゴルゴーンだろうか飾り物があり、内部には、小型・大型の納骨容器が収められている。正面の女性被葬者を納めた容器には、これまた大きなワントというエトルスキの冥界の女魔人が2体これを護るように立っている。他の容器には、容器正面に人物の頭部がついていて、エトルスキの通例の納骨容器の様式とは全く違っている。この訪問以後2度ほどまた訪れたが、何度見ても見飽きない。おススメスポットだ。
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ある日、サンドロが墓に連れて行ってやる、というので息子のルイージとともに、ペルージア北部の山間部に向かった。山中を30分ほど歩くと、なだらかな丘の斜面に、幾つかの陥没した地面が見受けられる。そのひとつは、斜面の横に穴を開け墓を作っていた。どれもエトルスキの墓だという説明書きのプレートがついている。サンドロの話によると、扉に蝶番が付いているので、時代は新しいものだろうということである。帰り道、ルイージが鼻をかむからティッシュをくれというのでそれを渡すと、サンドロが、そんなものはいらん、といって手で鼻をかんで見せた。これには2人とも笑い転げてしまった。

また別の日、近郊の新しく発見された埋葬地に連れて行ってもらった。その場所の名前は、意味ありげで、「鶏の首折」といったところだった。下が肉屋になっている、ビルの地下に墳墓があるというのである。中に入ると建物の基礎が見えるような、狭い空間に、入り口が1メートルぐらいしかない、雪のかまくらのような形をした墓が20数基以上確認できる。管理人の話を聞くと、どうやらエトルスキの下層民の墓であったろうとのことである。まだ新しいので、今後の研究成果が楽しみな埋葬地であった。

日本だと、発掘で最初に墓室に入るときには、清めの塩と酒を注ぐが、イタリアではそんなことはないようである。吉村作治先生が言っておられたが、そんなことをしては酒がもったいない、らしい・・・。イタリアでは沢山の墓を訪れたが、その後のことを考えると、清めの儀式は必要だったのだろうか・・・。

野人
by yajingayuku | 2009-09-16 22:48 |