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イタリア紀行(14)

イタリアでの電車の乗り方は少し日本と違う。先ず、日本のように大きな駅以外では到着列車の掲示がない。なので、据え付けの時刻表を皆が見て判断する。携帯用の時刻表があればとても便利であった。列車の中の到着駅のアナウンスがほとんど聞こえないぐらい小さな声である。改札口がない。なので、駅への出入りは自由である。切符を特別の機械で消印する(timbrare)ことになる。機械の口に差し入れて、ガッチャン、と印を打つ。こうしておかないと、電車の中で車掌さんの見回りで切符を確認する時に、違反金を支払わなければならない。このシステムは、バスでも同じである。
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ペルージアを朝早く出て、北上する。イタリアの町には、町を守護する動物がいる。ヴェネチアではライオン、マヨルカ焼で有名な陶器の町ファエンツァでは孔雀、ペルージアではグリフォン(翼をそなえたライオン)、そしてここアレツォではキメラである。キメラとはギリシア神話に登場する幻獣である。頭と体はライオンで、背中にヤギの頭がにょっきり突き出ていて、尻尾の先が蛇の頭になっている怪物である。前回に述べたように本物はフィレンツェの博物館に所蔵されていて、そのレプリカが駅の広場に鎮座して客を出迎えている。アレッツォは正真正銘のエトルスキの町である。大通りの突き当たりにサン・フランチェスコ教会がある。ここには、あの有名なピエロ・デッラ・フランチェスカの一連の壁画がある。小学生の時美術書で見たあの「シバの女王」の絵である。残念なことにはじめて訪れた時にはまだ修復の最中で、少ししか分からなかった。

大通りに、大きな大砲が車に牽引されて止まっているのを訝しげに眺めていると、おじさんが「買わないか」と聞いてくるので直ぐに断った。「こんなもん、何処におくねん」どうやら市が立っているらしい。そうこれが有名なアレッツォの市である。路地裏に入ると所狭しと骨董品が並べてある。食器、陶器類、ガラス製品、印鑑、絵葉書、古いレコード、家具などなど。よくもまぁ~これだけのものが集まったものである。何も買わずに通り過ぎたが、雰囲気はとても良かった。サン・フランチェスコ教会のすぐ近くに本屋があったので入ってみたが、そこで故クリストファーニ先生の絶版の研究書を見つけ出し購入した。これを見つけただけでも来たかいがあった。

持ち帰りのピッツァを食べて、ドゥオーモをお参りした。背の高い教会で、内部は神聖な雰囲気を漂わせていた。路地を歩き、画家のヴァザーリの家に行く。近くに、市立中近世美術館があったので入ってみた。夥しい数の美術工芸品が展示してある。中でも目を引いたのは、一群のマヨルカ焼の絵付け皿である。絵の主題に、ギリシア神話の「アポロンとマルシュアースの琴試合」というのがあった。マルシュアースはローマでも人気のあった人物で、カークスの研究をすると出くわす運命の登場人物である。

相当の時間をこの美術館で費やして、丘を下る。駅前で、古本屋が露天で開いていたので逐一見て回る。イタリアワインの本があったので購入する。はっと気づくと辺りに夜のとばりが降りはじめていた。「そうだ、考古学博物!!!」急いで駅前の博物館に行ったがもう開館時間はとっくの昔に終わっていた。「しまった」肝心の、メインのコースが抜けてしまった。今度また来るからと、アレッツォに一礼して、車窓の人となった。

野人
by yajingayuku | 2009-08-12 01:05 |