冬風

ヒュー、と風が泣く。
ここ下田は連日のように風が泣く。
特に、雨が降って、翌日が晴れの時は強風が吹く。

そういえば、こんな強風の島にいたことがあった。
喜界島。
車で30分もしないで島を一周できてしまう島。
信号機が一つしかない島。
周りは、太平洋と東シナ海に囲まれている。

なので、風を遮るものがない。
吹きっぱなし。
雨など降ろうものなら、本土の台風なみだ。

この風、塩を含んでいる。
そのために、金属は錆びる。
自転車は買って1か月ほどで、チェーンが硬くなった。
洗濯機もカタカタ音が酷くなる。

この塩を利用して、島の洞窟で、イタリア風の生ハムを作ってはと提案する人がいた。
でも実際には実現しなかったようだ。

この冷たい風の吹く頃、三鷹の駅から下宿先に帰る道で、サラリーマンがコートの襟を立てて、足早に家に向かう姿が思い浮かぶ。
赤ちょうちんを見つけると、このころの独特の風に乗って鼻に届く香りがある。
乾燥した、埃っぽい、でも自然の臭いではない、一種独特の町の臭いだ。

シューベルトの「冬の旅」を聴くと、この風や臭いを思い出す。
風には人を歩かせる力がある。
旅と風は兄弟だ。

そして、想像も郷愁も風に揺れて泣く。
春になれば、また風が吹く。
冬に別れを告げて・・・・。

「東風吹かば匂いおこせよ梅の花、主なしとて春を忘るな」
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「毒蛇は急がない」

Bayartai!

野人
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by yajingayuku | 2014-12-03 20:37 | 木陰のランプ