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イタリア紀行(38)

1ヶ月近くポンペイに滞在して帰宅すると、ペルージアの町は秋が一層深まっていた。イタリアの新学期は9月に始まるが、大学は実質的に11月ぐらいから始まる。イタリアに来て1年以上が経ち、大分落ちついてきていた。

秋のペルージアは色んな催し物で目白押しである。ロッカ・パオリーナという中世の城址では、「キノコ祭り」なるものが毎年開催される。その昔、ペストが流行して患者を収容したといわれているこの城には幾つもの部屋があり、その頑強なレンガで取り囲まれた大広間に、、ウンブリアで採取できるキノコが所狭しと陳列されていた。学術名がそれぞれのキノコに付されている下には、毒キノコか食用かが記載されていて、モノによってはマズイなどおと書かれてあるものもある。人目を引いていたのは、烏賊のように真っ白くて大きなキノコで、その傘の内側からは大量の墨のような真っ黒い液が流れ出ているものがあった。これはどう見ても食べられまいと思って名札を見ると、「オッティモ(最高!)」という文字が書かれていて、面食らってしまった。

大家さんの旦那さん、アレッサンドロはキノコ採り名人である。この時期になると息子のルーカを従え山に入る。どんなに親しくなっても子供以外には採取場所を教えてもらうことは不可能である。密かにそして確実に量をもたらしていた。この日も、大量にキノコを分けてもらったが、中にはどう見ても日本のキノコのようなもの、例えばエノキやシメジのようなものが混じっていた。

また、ウンブリアは、上質のトリュフが摂れることで大変有名で、この時期になると街中で安く手に入れることが出来、この祭りでも入手しやすくなっている。私は、大量には無理だが、香り付けぐらいはとの思いから一瓶小さいのを購入した。部屋に戻り、もらったキノコとトリュフで料る。トマトソースは使わず、シンプルにニンニクとオリーブ油を絡めた素麺に炒めたキノコを混ぜ合わせ、塩コショウだけで味付けした。これに、チーズおろし器でトリュフをおろしかけ、出来上がりである。湯気が立ち上り、部屋中が良い香りに包まれる。食欲が湧いてくる。食べ始めるとこれが止まらない。キノコの独特の香り、私はこれを山の香りと呼んでいるが、この香りが口中に広がり鼻に抜ける。と同時に、トリュフのえもいわれぬあの香りがやってくる。至福の時であった。

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ポルチーニ茸はイタリアを代表する高級食材で、イタリアにいた時にはめったにありつけなかった。乾燥したものが市販されていて、これにはよく厄介になった。これを水で少し戻しその戻し汁とともに、洗った米に入れ、醤油、酒、塩を加え、絹さやをひし形に1センチ幅ぐらいに切り、これに入れ、米を炊く。蒸気が吹き出るとともに部屋中に、松茸のようなキノコの香りが広がる。鍋を開けると、とても松茸御飯とよく似た感じに炊きあがり、贅沢を満喫できる。当時、この乾燥キノコは300円ぐらいで売られていて、よく購入できたが、最近では近くの食料品店でも見かけることがあるが、べら棒に高く売っている。

秋のイタリアは、キノコの思い出に包まれている。今度またキノコのパスタを作ろう・・・ペルージアを思い出しながら・・・。

野人
by yajingayuku | 2009-09-07 04:41 |