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イタリア紀行(29)

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目覚めると、空は雲で覆われ今にも泣き出しそうだった。イタリアで晴れ男もこの地ではそうはいかないようだ。まだ太陽が昇らないうちに御飯を炊き、味噌汁を作り、目玉焼きを作る。隊員が集まり朝食を済ませる。チンツィアの運転する車で出発。舗装されていないでこぼこの道が続くブドウ畑を抜け、古代都市ポンペイの城壁区域に到着する。

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古代ポンペイの城壁には幾つかの塔があったと伝えられていた。近代になり発掘が進む中で、都市構造史の中で「カプア門」の比定が曖昧なまま残されていた。今回の発掘はこの「カプア門」の存在の有無を確認することが第一の目的である。結論から言うと、調査の結果、「カプア門」は存在しない。「無」ということもまた考古学の大きな成果である。何も財宝が「ある」ということだけが学問的価値があるのではない。

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「カプア門」があると指摘されていた部分には、城壁の外部と内部の発掘部分、それに城壁に付随している構築物らしい遺構の2箇所に分かれていた。私は、その遺構の四角い構造物の内部が掘り進められたセクションにまわされた。8畳ぐらいの空間は既に2メートルほど下層に発掘が進み、構造物壁体上部には作業用の櫓が組まれている。私は、その櫓に登り、突き出した丸太にバケツの付いたロープを滑車を通して引っ張り上げ、後ろのベルトコンベアーに掘土をのせる単純作業を任された。下では、下層部を掘るもの、その堀土をバケツに入れるもの、2人の隊員が作業していた。どれぐらい同じことを繰り返しただろうか、チンツィアがやってきて、昼ごはんの注文を聞いてきた。パニーニのようだが色々種類があるようだった。一同手を止め、注文する。同僚は、先ず、ミラノ風カツレツのパニーニを食べた方がいい、と口をそろえて私にアドバイスしてくれる。これに決め、再び作業に戻る。暫くすると、鍋をたたく音がする。昼飯の時間である。梯子を上り下の隊員が地表へ出る。私は、櫓から降り、保管棟兼休憩所の建物に向かう。飲み物を取り、パニーニを頬張る。美味い!!!コルトーナのそれ、いやローマのそれよりも美味いパニーニ。恐らく私の中では一番美味しいパニーニである。

作業には、地元のイタリア人人夫が数名参加していた。彼等からは、食後、ナポリ式カプッチョ(イタリア人は「カプチーノ」のことをこう愛称で呼ぶ)の作り方を教わる。エスプレッソとは別のカップに温めたミルクと砂糖を入れ、これを兎に角勢いよくひたすらかき混ぜる。水気がなくなり泡立ってきたら、これをエスプレッソの上にかける。これで完成。このカプッチョを飲みつつ、話すのは女の話である。大笑いしている人夫と隊員の傍らで、人夫の親方は何も言わず寡黙にコーヒーを飲んでいた。

午後も同じ繰り返しである。何日か経過して、一定のところまで掘り進めると測量が始まる。私もポール持ちをやらせてもらった。測量器の使い方が分からないので、隊員の人に測量はまかせっきりである。そうこうしていると発掘は終わりになる。イタリア人たちとも別れて、研究所に向かう。隊員の洗濯物を洗濯機にかけ、夕食の準備がはじまる。買い物に出かけ、豚肉を購入する。自腹でサラミを何本か買う。初日は、トンカツだった。昼、ミラノ風カツレツだったがそんなことは関係なかった。飯が出来るまで、ワインを飲みながら、サラミを食した。四国の大学から参加されていたN先生がサラミを大いに満足され、場が一段と和んだ。

シャワーを浴び、ひとり、大広間にもどり、蒲団に潜り込んだ。目をつぶると昼間の光景が現れた。しかし、ドロのように眠り込んでしまった。

野人
by yajingayuku | 2009-08-28 01:14 |